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標準的な銀行行動の理論と複数金利の同時決定メカニズム機械的信用乗数論のもうひとつの理論的な問題点は、信用乗数を規定するパラメーター(ここでは、α、β)を一定と仮定して、信用乗数を計算している点にあります。
この仮定は銀行が預金のうちのβを機械的に貸し出すということを仮定していることを意味します。
しかし、銀行も収益(利潤)最大化を目指す企業である以上、利用可能な資金を機械的にすべて貸出に向けるという仮定は非現実的です。 これに対して、標準的な銀行行動の理論は、銀行が収益最大化を目指す企業であるという観点から、金利・貸出量決定についての分析枠組みを提供します。
銀行の貸借対照表を単純化したものです。 いま、銀行はこの制約のもとで収益の最大化を図ると考えます。
銀行の収益最大化の条件は、各運用先から得られる限界利益(一単位の追加的運用から得られる利益)が限界費用(一単位の運用原資を追加的に調達するコスト)と等しくなることだと考えられます。 ただし、銀行の資産・負債の運用・調達期間のズレの問題はさしあたり捨象することにします。
こうした前提が満たされているとき、銀行は少しでも運用収益の高いところに資金をシフトさせていくことになります。 資産・負債構成を持つ銀行について考えてみましょう。
単純化のため、預金金利は所与で、この水準で預金者が預金する量については、銀行がコントロールできず、また、中央銀行からの借入についても中央銀行側が決定権を持っているとします。 さらに、準備預金は付利されないため、銀行は必要最小限しか持たない、と仮定します。
このとき、銀行がなすべき意思決定は、貸出量と、その貸出を達成するために必要なコール・ローンの放出量(ないしコール・マネーの取り入れ量)の同時決定ということになります。 仮に、コール・レートの方が貸出金利マイナス貸出事務コストより低ければ、コール・ローンを回収して貸出やコール・レートが高いコール・レートが低いときの均衡貸出量ときの均衡貸出量(注)EC,E1は各々コール・レートと貸出収入が等しい点に対応している。
なお,貸出事務コスト等は,貸出量がふえるに従って増加すると想定されている。 充てた方が収益が高まりますから、収益最大化条件を満たしません。
したがってこの場合、コール・ローンを回収し(場合によってはコール資金を取り入れて)、貸出を伸ばし、貸出金利マイナス貸出事務コストがコール・レートと一致する状態にまで、もっていった方がよいことになります。 これを金利決定メカニズムの観点からみると、均衡では、コール・レートと貸出金利の水準は同一ではなく、貸出金利の方が審査費用など事務コストやデフォルト・リスク(借手企業の倒産などにより約定通りの返済が受けられないリスク)に見合ったプレミアムの分だけコール・レートより高くなることがわかります。
以上の説明は個々の銀行について考えていますが、銀行部門全体を集計し、市場全体の均衡についてモデル化してもこの結論は変わりません。 利潤最大化行動から派生するこのような関係は、貸出金利とコール・レートの関係のみならず、満期構成の一致している諸金利間で原理的に成立します。
このため、中央銀行による短期金利の高め誘導などの金利政策が、貸出行動を含めた銀行行動および通貨供給量に大きな影響を及ぼすことになります。 前で紹介した銀行行動の理論の考え方は、伝統的なミクロ経済理論に立脚し、銀行を完全競争側銀行行動の理論の発展的で不確実性のない貸出市場において短期利潤最大化を図る企業と考えています。
これに対して、@日本の場合、貸出金利はコール・レート等に比べて変化幅が極めて小さく、標準的な理論の現実妥当性には疑問がある、A銀行は短期的な利潤よりも貸出市場における長期的な顧客関係を重視して行動している、B銀行・企業はさまざまなリスクや不確実性ないし情報の非対称性に直面しており、金融仲介機関である銀行の本質と役割を考えるうえで、これらの問題は無視できない、などさまざまな観点から、銀行行動の理論を修正・補完する理論的発展がみられます。 特に近年では、銀行が借手企業についての情報を蓄積し、その経営をモーターする、という点に焦点を当てた分析が盛んですが、ここではこの点についてはこれ以上立ち入らないことにします。
長・短期金利の相互関係金利の期間構造前節では、満期が同一の異種金融資産間の利回りの相互関係がどのように決まるかを説明しました。 この節では、満期の異なる同質的な金融資産の利回り間の関係について説明します。
短期の金利と長期の金利との関係は一定ではなく、時期によって大きく変わるのが普通です。 各時点の金利間の相互関係をみる手段としてよく用いられるのが、利回り曲線です。
このとき、期待理論では、二年物の利回りが六%以上であれば投資家は二年物を選び、六%以下であれば一年物を選ぶ、と考えます。 こうした形で投資家による短期運用と長期運用の裁定が起こるとすれば、長期金利は短期と将来の期待短期金利の平均水準に決まることになるでしょう。
この考え方では、投資家は各種の資産の期待利回りを計算し、利回りが高い資産を選ぶとされます。 例えば、いま投資家は、残存期間一年の国債と残存期間二年の国債しか入手できず、前者の利回りが五%、また、一年後は残存期間一年物の期待利回りが七%であるとしましょう。
この場合、一年物の国債を買い、一年後に、また一年物に再投資した場合の平均期待利回りは六%になる時点では、残存期間一年では五・五%、残存期間五年では約六・五%百点)と、長期の方が高い利回りとなっていたことがわかるわけです。 期待理論の考え方でいくと低下すると期待されているために、現在の長期金利が短期金利を下回っている、と解釈されます。
これに対して、時点、に観察された右上がりの金利の期間構造は、先行きの金利上昇期待を反映していると解釈され、また時点、に観察された金利の期間構造は、当分、金利が変化しないであろうという期待を反映していると解釈されます。 流動性プレミアムによる期待理論の拡張と市場分断仮説期待理論では、投資家は期待利回りのみに着目して金融資産間の裁定を行う、と考えました。
これに対して、ヒックスは資産運用者は短期の運用を好むため、長期資産への運用は予想外の金利変動等により、資産価値が低下するリスクを負うこととなると考えました。 この場合、長期金利は、このリスクを補償する分、予想短期金利の平均値より高くなります。
この割高分を流動性プレミアムと呼びます。 しかし、投資家はつねに短期運用を好むとは限りません。
現に保険会社など長期運用を好む主体は多く存在します。 この場合、流動性プレミアムが運用期間が長くなるに従って大きくなるとは限りません。
各経済主体は、それぞれが好む資金の運用・調達期間があり、それと合致しない期間の運用・調達対象に対しては、かなりの金利差(プレミアム)が発生しないとシフトしないということも考えられます。 この考え方を推し進めると、短期資産と長期資産間の裁定は極めて弱く、むしろ各満期期間ごとの需給により、金利が別々に決定されていると考えるべきだという考え方になります。
このような考え方を市場分断仮説と呼びます。
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